そうか、そうか

~とあるSIerの、哀と涙の軌跡~

VMware Cloud on AWS ~ここがオンプレとは違うんだよ 編 その1~

何だこのタイトル?(´・ω・`)

 

と思われるかもしれませんが、今回はVMware Cloud on AWS(以降VMC)とオンプレミスのvSphere仮想化基盤の違いについて、何点かご紹介しようと思います。

 

 

ログインユーザーについて

VMCへのログインは、原則として「cloudadmin@vmc.local」のみで行います。

バージョン5.1以降のvSphere仮想化基盤を利用された方であれば、『administrator@vsphere.local』というユーザーになじみがあるのではないでしょうか?

 

VMCでは、ユーザーは「administrator」が使えません。

この「cloudadmin」というユーザーが、我々利用者が使える唯一のユーザーになります。

 

さて、このcloudadminですが、「じゃあ、VMCのvSphere基盤ならなんでも触れる権限持ってるんだよね?」というと、そうではありません

 

実際に、ユーザーを追加するための画面です。

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赤点線枠にあるように、『vmc.local』というSSOドメインに対して、ユーザーの追加ができません。

 

さらに、グループはというと…

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表示権限すらありません。

VMCでは、SSOのドメインユーザーを作成し、権限を割り当て、運用を行うということができません。

 

クラスタグループの設定変更

vSphere HA

vSphere DRS

という機能が、vSphereにはあります。

 

これは、vSphere仮想化基盤を使用された方や設計された方であれば、とても馴染みの深い単語だと思います。

どちらも、vSphereの主力機能であり、仮想化基盤の冗長性を容易に高めてくれる素晴らしい機能です。

 

VMCでは、この機能が既定で「ON」になっています。

ふむふむ。

たしか、vSphere HAには「アドミッションコントロール」や「ハートビートデータストア」や、「APD」「PDL」の設定とかが色々あったなぁ…そこらへんは変更できるのかなぁ

 

と思ったあなた。(私のことです。)

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その必要はありません!

まず、vSphere HAもvSphere DRSも、どちらの設定も変更することはできないようになっています。

これについて、VMwareは以下のように記載しています。

vSphere DRS

VMware は、発生する移行の数を最小限に抑えながら最適なリソース配布を行う設定を選択しています。これらの設定は変更する必要がないため、変更できません。事前構成済みの値は、参考値として使用できます。

 vSphere HA

 vSphere HA の設定を確認します。設定は、クラウド環境に最適化されています

 

当然と言えば当然で、vSphere HAは、「ハードウェア障害」に対応するための機能といっても過言ではありません。

ですが、ハードウェアは「AWS(VMware)」が管理をしています。

よって、その設定はVMwareにより最適なものが設定されている。

 

ということですね。

 

ユーザーのみならず、SEさんも、「クラスタ」という大きな設計要素が不要になるのは大きいですね。

 

管理系のコンポーネント

VMCでは、vCenter ServerやNSXといったいわゆる「管理系のコンポーネント」の仮想マシンに対して、電源操作などは一切受け付けないようになっています。

 

これらのマシンは、VMC上で仮想マシンとして稼働し、Mgmt-ResourcePoolの下に格納されています。

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試しに、vCenterをシャットダウンしようとしても…

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ご覧の通り、電源操作系が全て非アクティブ状態になっています。

 

ちなみに、ESXiホストもメンテナンスモードや

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電源のシャットダウンなどもできないようになっています。

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データストアは2種類ある

VMCは、外部共有ストレージを持たず、VMwareのSDS技術である「vSAN」を使用しています。

VMCでは、

・vsanDatastore

・WorkloadDatastore

の2種類があります

 

前者は、vCenterやNSXが稼働するデータストア

後者は、ユーザー作成した仮想マシンが稼働するデータストア

 

となっており、もう予想もついているかと思われますが、

『vsanDatastore』を触る権限が、ユーザーにありません。

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このようにどんなファイルがあるのかも見ることができません。

 

仮想マシンを作ると、それらは全て「WorkloadDatastore」に作成されます。

 

また、このデータストア、ちょっと変わったつくりになっています。

下図、容量に注目してみてください。 

 

まず、vsanDatastore

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次に、WorkloadDatastore

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お気づきでしょうか?

使用容量が全く一緒です。

 

これは、両データストアが同一領域を参照しているためです。

 つまり、ユーザーがWorkloadDatastoreを使用すれば、vsanDatastoreの容量も同じだけ減っていく、とうことになります。

 

 同じ領域を見ているデータストアが2つある、というのは何とも面白い構造ですね。 

 

こうした制限はなぜあるのか?

理由はとっても単純で、VMCがVMwareAWSによって「サービスとして提供されているものだから」でしょう。

 

提供するサービスの根幹を成すような設定を、ユーザーによって勝手に変更されたり、停止されたりしたらサービスとして成立しません。

ユーザーは、あくまでvSphere仮想化基盤を「使用する立場」であり、使用するのに必要な権限が「cloudadmin@vmc.local」というユーザーに与えられています。

 

従来のオンプレ基盤と異なり、戸惑うところもあるかもしれませんが、

「使用する」ということに専念させてくれるのは、ユーザーにとって一番ストレスのない形態だと思います。

 

今回は、オンプレミスとの違いを『使用者』および『設計者』の観点からご紹介しました。

あと1つ2つほどご紹介したいものがあるのですが、その2で書きます。